新しい街

新しい住居の内見を済ませてきた。
改めて東京に戻るのだと思うと、足がすくんで動けなくなる。
はたして、どこまで長く続けられるのだろうか。

水商売は私には向いていなかった。
生まれ持って得た顔の作りだけでその場をなんとか取り繕っているだけで、客を満足させる事など何一つできない。
笑顔でたわいもない雑談をするなんて最も苦手な作業だ。
更に、やれ痩せろだの髪を明るくしろだの言われてモチベーションも下がる。
下がったままのモチベーションで笑顔になんてなれないから薬を常備する。

この業種の唯一の利点は、携帯をいじりながらぼーっとしてても時給が発生する所と休みの融通が利くこと。
それ以外はおっさんのセクハラ地獄でしかない。精神を悪化させる要因の一つにもなり得た。

「もう嫌だ。普通の仕事がしたい…」

そんな風に強く願った時、突然採用の電話がかかってきた。
私にはこういう奇跡が度々ある。元来は運がいい体質なのだ。

しっかりと働けるかは分からないし、とうてい判断もできない。
しかし一つだけ分かっていることは、
水商売に戻るよりは精神的に楽だろう、ということ。

p.s.未来の私へ
もう無理なダイエットも似合わないドレスもしたくない着たくない。おっさん達に気持ち悪いこと言われるのも疲れた。だからお願い。頑張って。